徳島県で映像・写真・執筆などのクリエイティブ業を営んでおります、DAISUKE KOBAYASHIです🎥
今日はA24作品、アレックス・ガーランド監督の「シビル・ウォー」をアマゾンプライムで観ましたのでそれについて。
アレックス・ガーランドは今作ではじめて意識をした監督でしたが、調べてみると「エクス・マキナ」や「アナイアレイション -全滅領域-」など、僕が非常に面白いと感じた映画を制作してきた監督であり、実は脚本家としても活動しており、僕が好きな作品だとダニー・ボイル監督「28日後…」などがあります。(続編パート3の28年後のトレーラーが公開されましたね!)
そしてなんと!小説家でもあり、ディカプリオ主演、こちらもダニー・ボイル監督の「ザ・ビーチ」の人でもある、非常に才能を持った方なのです。
そんな監督が制作する今作がシビル・ウォー。
アメリカで内戦が起き(保守派テキサスとリベラル派カリフォルニアが同盟を組み)、まるで明日にも起こりそうな現実を描いた作品として多くのメディアで取り上げられており、確実に時代とリンクする触れ込みに「何!?これは!!こんな映画を待っていたんだ俺は!!!!!」と期待せざる得なかったのですが、現在子育て中の僕は映画館に足を運ぶ時間を設けることができず、結局Amazonプライムで先日観たというわけです。
しかしAmazonプライム、配信早くて驚き&嬉しい!
で、非常に期待をした今作でしたが…その期待は若干外れるものとなりました…
というのも端的に書いてしまうのなら、プロット設定が完璧すぎたわりに肝心な内容はなんだか”あっさり”していたのです。
僕の周りでもこうした感想を持った方は結構多くいたようで、「物足りなかった…」といった声を聞きました。
“物足りなかった部分”については後述しますが、後々考えれば考えるほどプロット、ストーリー、演出などの細かなディテールが素晴らしく、一回観ただけではすべてを理解できない映画とも感じており、もう二度三度と観てみたいと思っている作品でもあります。
ですので、単に「つまらなかった」とかそういう訳ではなく、触れ込みが強烈過ぎて、映画自体がそれを超えることができなかったと感じた作品でした。
それが今回のタイトルとした、”A24に限界を感じた作品”なのですが、まあA24ってやっぱりどこまでいっても良くも悪くもオルタナティブ…というべきかB級映画を作っているプロダクションというべきか。
ハリウッドでは作れない作品を多くリリースしている素晴らしいプロダクションではあるのですが、限界はこのあたりなのかな…なんて事を感じたのでした。
どういう事かというと、要は僕はタランティーノが表現した「パルプ・フィクション(アメリカ)」やダニー・ボイルの「トレインスポッティング(イギリス)」に凄まじいほどの影響を受けていますし、これら映画は僕に限らずアメリカとイギリスの映画界を激変させたゲームチェンジャー的な作品でもあります。
今作は上記の映画と同じぐらいインパクトを各業界に与える作品となるのではないか?と密かに期待をしていたのですが、映画の内容と合わせてそちらも大きく外れたように感じるのです。
内戦ってよりは世代交代ロードムービー
さて、肝心な内容はというと、戦争写真家集団”マグナム”のベテランフォトジャーナリストのリー(キルスティン・ダンスト)とそれに憧れる20代前半のジェシー(ケイリー・スピーニー)を中心に、内戦を軸に物語が展開されていく、ロードムービーとなっています。ロードムービーなのである種、ジェシーの成長物語です。
先ほど”あっさりしていた”と書きましたが、ロードムービー故に主人公たちは各所に訪れます。これが今作のプロットの重要ポイントですが、ここがなぜか非常にあっさりとしており、観ていてなんだか物足りないと感じたのです。
描くべき事を描いているため意味はもちろん解るのですが、セリフも時間も端的すぎて、観ている側としては「あれ?もう先の展開にいっちゃった…」みたいな感覚に陥ってばかりでした。
ガススタシーンも最初の銃撃戦も鎖国していた街も、もっと見たかったなーってのが本音。
もっと情緒や無駄話があった方が好きといった個人的な好みかもしれませんが、あまりにもあっさりしすぎていたので、僕の周りの友人からもそのあたりのあっさり具合の評価はかなり低かったのです。
しかも訪れる各所単体の出来事だけで、ご飯三杯はいけちゃう題材でもあったりするので、余計にもっと観たかったな〜といった感じです。
ジェシー・プレモンス演じる赤サングラス”shit”レイシストくそ野郎のシーンはかなりグッときましたが、分かりやすくアジア人や黒人が死んでしまうという構図となっており、もう最近のポリコレに対するベタベタな流れにう〜ん…もっとひねり欲しかったよねと思うところもありました。(ここをA24らしく攻めてほしかったのだ!)
そして、最終的には内戦のゴタゴタよりもリーとジェシー二人の世代を継ぐ物語としての印象が強くなってしまったため、当初期待した、どうなるアメリカ?どうなる現代の南北戦争?のゾワゾワ感は一体どこに行ってしまったのやら…といった感じでした。
ラストシークエンスは、「大統領にインタビューとかもはやどうでも良いわ…」となってましたし。
だったら例えば「トゥルー・ロマンス」のようにデトロイトってプロット設定だけでいいじゃん!って思うわけです。その設定だけですべてが理解出来るわけです。
因みに、僕はカメラマンやジャーナリストとしての理解がおそらく一般の人以上にあります。故に使っているカメラがある程度わかりますし、なぜそれを使っているのかを紐解く知識と理解力もあります。
なにせ写真家集団マグナムの写真集も持っているほどです。
で、リーはおそらくSONY α7RVに、レンズはライカのズミクロン35mmと100-400mmのGマスターを使い分けるスタイル。
ジェシーはそれとは対照的でNikonのFE2というフィルムカメラにこちらレンズは35mm一本でモノクロスタイル。
なので、このカメラの属性の違いで監督は何を表現したかったのかというと…
端的に書くならこれは”世代交代”を意味していると僕は感じています。(因みに僕の立ち位置はリーでSONYユーザーなのでよーーーく解るのです)
もっと言えば、世代交代を拒む既得権益者への皮肉ってところでしょうか?
アレックス・ガーランドもリーも、そして僕も既得権益を持つ古い人間と若者の間に挟まれているY世代、X世代です。
もしNikonのフィルムカメラを持ち、第一線で活躍しようとする若者が居るのなら、アドバイスをしながら確実に背中を押すでしょうし、同じSONYのカメラを使っているのなら、まず興味を持つことはありませんしアドバイスもきっとしません。
これはカメラをやっている人間だからこそ感じられる、ちょっとしたニュアンスでもあるのです。このあたり、アレックス・ガーランドは非常ににくい演出をしたなと思いましたね。
で、劇中にそれぞれが撮った写真が映されますが、上がってくる絵の違いがあまりにも二人の物語を反映してしまっているため、内戦はあくまでも状況であって、二人の関係に物語の軸があるんだと、そっちに心を引っ張られてしまうのです。
なので、期待していた”内戦が起きたアメリカ”が弱くなってしまった(要はあっさり)してしまったのだと僕は感じました。
いや、トレーラーでは内戦激押しだったんで、物語の中心はてっきりそうした内容かと思ったんですけど。
使われている楽曲や、映画自体の尺も関係しているかもしれません。楽曲の使い方はかなり面白く、ミスマッチながらもなにか皮肉が込められた使い方がされており、全体的にポップに仕上がっているのです。
デ・ラ・ソウル、スーサイドなど、僕は当時リアルタイムで聴いてきていませんので(もっと言えば現地で)監督の意図を汲み取ることは出来ませんでしたが、例えばその時代を知っているアメリカ人が聴いたら、その時代感を極めて上手に、そして皮肉に映画に表現していると、僕は感じたのです。見せたいところだけ歌詞が出ますしね。
尺は110分未満と、最近の映画にしては短め。「地獄の黙示録」であれば150分以上となっているため、いわゆる大作にしてはかなり短いのです。あっさりと感じたのは単純に尺の問題でもあるように感じます。
そして、アレックス・ガーランドの来日インタビューをいくつか読みましたが、彼曰く「敢えてそうした」ところがあったようなので、こちらはある種新しい表現なのかもしれないなと思った次第ではあります。
おそらく彼は隅々までこの映画の特徴を理解しており、観客らがどのように感じるかもある程度理解をした上で本作を作っている様子すら感じました。
そう考えると観る人の社会や政治に対しての理解力が、逆に問われる作品でもあるなと感じましたね。めっちゃ解りやすいですけどね。僕はなんとか監督の表現したいことをギリギリ理解できたかな?といった感じです。
ただ、赤サングラス野郎の一件もそうですが、本作は明らかに反トランプでありリベラルなんで、もっと中庸的表現の方がグッと深みが出るはずなんですが。そう、「プラトーン」のように。
それをイギリス人監督がやっているといった不思議な構造になっているのも見逃してはいけません。
で、アマゾンプライムではかなり評価が低い様子…
僕は期待は外れましたが、社会や政治を描写した細かな演出は見逃せなく、決して評価の低い映画の部類でないことは間違いありません。
それでこの評価。大丈夫か日本。
解らない事もないけど、ぬるま湯に浸かり過ぎて大事なことを見過ごしているんじゃないか?そう思えてなりません。
Comments by daisuke kobayashi
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VoightLander 単焦点レンズが欲しい。
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